小さな灯
~転機となる新しい考え方~

ごきげんよう!
シンガーソングライターの梨木ハルトです。
前回の記事では、システムエンジニアとしてハードな現場を経験して、今後の人生について考えたという内容でした。

今回は私の今後の人生に大きな影響を与えたある考えについて話したいと思います。

それでは次へまいりましょう!

「ダウンシフト」という考え方に惹かれる

システムエンジニアとしての生活があまりにもしんどかったとき、出会い、影響を受けた本がありました。
それは高坂勝さんの書いた「減速して自由に生きる: ダウンシフターズ (ちくま文庫) 」という本です。

その本の中にはサラリーマンを辞めて、小さな生業としてのバーを開き、稼ぎは多くなくても小さく暮らして支出を抑え、農や味噌づくりなど自分で生み出せる豊かさに着目し、幸せに生きる著者の姿が描かれています。

彼はサラリーマン時代、大手百貨店の営業に携わりますが、たくさん売ってたくさん働いて、そこそこの給与をもらう生活をしても、自分の自由になる時間や、自分の好きなことをやる時間を犠牲にしていては意味がない。ということを思い始めます。

あるとき、入社当初から「どうしてこんなに物が多くなくてはいけないのだろう?」ということに疑問を持っていた著者は、会社員を辞めて自分の夢だったバーを開くことを決意します。

そして「たまにはTSUKIでも眺めましょ」(通称「たまTSUKI」(※今後はたまTSUKIと書きます)という名前のバーを開いたのでした。

私は彼の本を読んですごく感銘を受け、「会社を辞めたい」という想いが強くなりました。
けれど、そのときの私には会社を辞めてしまうような勇気も行動力もありませんでした。

辞めたところでその後どうするべきか。

そういったことがまるで思い浮かばなかったからです。

実際に著者に会う

※写真はたまTSUKI店内

たまTSUKIが池袋にあると知り、私は一度行ってみたくなりました。
そして、ある雨の日に付き合い始めたばかりの彼女(※今の妻)を誘って著者の店に行きました。

(「初めてのデートでたまTSUKIってどういうことよ!」と今でも妻からネタにされます)

マスターの高坂さんとは、出身大学も一緒、ブルースや洋楽ロックなど音楽の趣味も合って話が尽きません。

そのうち仲良くなり、月に1、2度くらいのペースでたまTSUKIに通うようになりました。

たまTSUKIには仕事を辞めて生き生きと自分の人生を生き始める人ばかりが訪れます。
それまで私は「会社員として生きていくことが普通であり、真っ当な生き方なのだ」と思い込んでいたようなところがありました。

ところが、たまTSUKIに行くとそれが逆転します。

店内ではお客さん同士会話が弾んだりすることも珍しいことではありません。

そうすると「早く会社辞めた方がいいよ」という言葉を言う人までいます。
たまTSUKIではマイノリティー(少数派)とマジョリティー(多数派)が逆転するのです。

そのような空間があることに私はとても勇気付けられました。

そして、

いつか自分も会社を辞めたい。

今はまだタイミングではなくても、これだけ辞めている人がいるのだ。いつか自分も辞めることができる。

とそう思うようになりました。

著者とライブまでする仲になりました

なんだかとっても楽しそうな写真ですが、匝瑳市にある田んぼで農作業の後のライブの様子です。左上の人物が著者の高坂さん、真ん中が私、右が友人のパーカショニストのSさんです。

幾度かたまTSUKIに通ううち、写真のような感じで、Sさんや、漫画家「山田玲司」さんを師匠と呼ぶ飲食店関係者のFさんと仲良くなり、一緒にたんぼに行って農作業をしたり、寺田本家という自然酒を作っている酒蔵を見に行ったりして交流を深めました。

まさか本を読んだところからこのような仲になるとは思いも寄りませんでした。

写真に写っているSさんとはシェアハウスを借りて、千葉の佐倉の方で住んでみたり、ライブを一緒にやったりととても楽しい時を過ごしました。

後日談

たまTSUKIに初めて行ったのが2011年のこと。

2016年に5年越しの想いで会社員を辞めた私は、そのことを報告しに行きました。
その私の報告に、
高坂さんから「おお!」と驚かれ、

辞めた経緯を説明すると、

「発酵したんだね~」

ということを言われとても嬉しくなりました。

そんな彼の店ですが、2018年3月をもって「減店」(高坂さんらしいネーミングで、実際は自分は店主を降りて、他の方に引き継ぎ)するそうです。

最近はめっきり高坂さんに会ってみませんが、「減店」する前にまた訪れたいと思っています。

※音楽人生シリーズはまだ続きます。次回は「社会人編6」です。

最後に

彼の言う「ダウンシフト」とは、成長、消費を良いとするシステムに乗らずに農や自分で生み出せる価値によって、出ていくお金をより少なくすることによって生活のペースをダウンさせ、あくせく働いて収入を稼がずとも自分の好きなことをして生きていくというような考え方です。

私は「ダウンシフト」という考え方に100%賛同しているわけでも、会社を辞めることを推奨しているわけもありません。

実際、大変なのは会社を辞めてから(今は本当に大変(汗))なのですが、小さなアクションがいずれ大きな変化になるのだなあとこの記事を書きながらつくづく思いました。

これを読んでいるあなたが、もし何か変化を起こしたいと思っているならば、まずは「本一冊を買う」でもいい、自分にない情報を取り入れるところから始めてみてはいかがでしょうか?